手術・治療

合併症

合併症の種類

術後皮下血腫

広範にしかも徹底的にアポクリン汗腺を除去するために皮膚がかなり薄くなります。そのために稀に剥離した皮下と腋窩の間に出血がたまることがあります。かなり痛みを伴いますので発生を疑うことは容易です。すぐに血腫を取り除く必要があります。処置が早ければ特に問題はありません。

術後皮膚壊死

血腫を放置した場合や血流が悪い状態のまま腋窩の安静が保てなかった場合にやはり稀に生じえます。これも適切に処置すれば大事にはなりませんが、創の治癒までの時間がかかることになります。

わきが・腋臭症合併症例(直近の約400症例の中から)

症例1

以下は術後の血腫から皮膚壊死を生じた例です。術後2週目では皮膚が壊死し一見、醜悪な傷跡を残すように見えますが、術後3ヶ月を見て頂くとわかりますように、かなりきれいに治ります。この場所は皮膚が柔らかくあまり大きなケロイド等にはなり難いようです。ややひきつれていますが、時間の経過と共にそれも和らいでいきます。

    • 術後2週間

      術後2週間

    • 術後3ヶ月

      術後3ヶ月

症例2

術後、皮膚に虚血性の変化を生じ、一部が壊死に陥った症例

    • 術後2日目、皮膚の色が赤黒く虚血性変化を疑わせる。

      術後2日目、皮膚の色が赤黒く虚血性変化を疑わせる。

    • 術後2週間、抜糸直後

      術後2週間、抜糸直後

    • 術後1ヶ月後

      術後1ヶ月後

症例3

皮膚の虚血性変化が壊死、ひきつれとなった例

    • 術後5日目、皮膚が赤く糜爛状となっている。

      術後5日目、皮膚が赤く糜爛状となっている。

    • 術後2週目、一部の皮膚が壊死しひきつれが強くなっている

      術後2週目、一部の皮膚が壊死しひきつれが強くなっている

    • 術後1ヶ月、ひきつれが最高に強い時

      術後1ヶ月、ひきつれが最高に強い時

    • 術後2ヶ月、ひきつれが解消し、皮膚の色もほぼ正常になって、傷跡もほとんど目立たない

      術後2ヶ月、ひきつれが解消し、皮膚の色もほぼ正常になって、傷跡もほとんど目立たない

症例4

術後皮下血腫から壊死となった例

    • 術後3日目、皮下に血腫あり直ちに血液を排除する処置を行った。

      術後3日目、皮下に血腫あり直ちに血液を排除する処置を行った。

    • 術後10日目、一部の創が離開している

      術後10日目、一部の創が離開している

    • 術後2週目、創は小さくなってきたが、少しひきつれが始まっている。

      術後2週目、創は小さくなってきたが、少しひきつれが始まっている。

    • 術後2ヶ月目、ほぼひきつれも解消し、傷跡も目立たない。

      術後2ヶ月目、ほぼひきつれも解消し、傷跡も目立たない。

症例5

術後皮膚壊死を生じた例

    • 術後10日目

      術後10日目

    • 術後20日目

      術後20日目

    • 術後2ヶ月目

      術後2ヶ月目

同じ手術を行っても、皮膚壊死を生じる方と生じない方がいらっしゃいます。なぜその差があるのかはわかりません。

もともとある真皮の中の血管のネットワークの違いがあるのだろうと思います。生じやすい方はネットワークが疎なのではと推測します。 再手術の方は皮膚壊死を生じることはほとんどありません。それは前回の手術による血行遮断のために新たな血行のネットワークが生じ、再手術時にはそのために壊死が生じにくいようです。

 

5番目にあげた症例は、私の経験の中でも、最高レベルに近い皮膚壊死ですが、手術から起算してだいたい1ヶ月程度で治癒します。合併症を生じないのが、もちろん最も良いのですが、仮に生じた場合でも確実に治癒します。そしてその場合でも術後2週を経ると、肩の運動制限等も必要ありません。確実な手術を目指すと、ある一定の確率で皮膚壊死等の合併症を生じます。ただ時間はかかっても確実に治るものだということを、ご理解下さい。

皮膚壊死(数パーセントの発症率)を生じた場合の、治療と治癒過程のシェーマ

壊死を生じた場合、初めはびっくりすると思います。しかし時間は少々余計にかかるものの完全に治癒するものだということをご理解ください。

    • 術直後

      術直後

    • 血行不良が疑わしいとき

      血行不良が疑わしいとき

    • 処置:壊死部分を切除します。

      処置:壊死部分を切除します。

    • 処置後2週間

      処置後2週間