その他の手術

腹腔鏡下胆嚢摘出術

胆石症について

胆石症とは胆嚢のなかに石ができる病気です。胆石だけを摘出すると、胆石が高率に再発するため、手術は胆嚢を切り取る胆嚢摘出術が行われます。

胆石症の診断について

エコーやCT等の画像診断より胆石症と診断します。現在、エコー検査による発見が最も多いと思われます。ただ手術前の検査としては、DIC(点滴で胆嚢、胆管を映し出す検査)やERCP(内視鏡で胆管、膵管に直接造影剤を流し込んで映す検査)を行うことがあります。

手術について

腹腔鏡下胆嚢摘出術とは、腹部に4ヶ所の穴(大きさは、へそ上に10mm、みぞおちに10mm、右上腹部に5mmを2つ )を開け、その穴から内視鏡や手術鉗子を挿入し、胆嚢を摘出する方法です。この術式の利点は、傷が小さく、術後の痛みが少なく、回復が早いことです。ただ癒着のひどい場合や、胆嚢の炎症、萎縮や肥厚などが強い場合には行えないことがあります。また、テレビモニターを見て手術を行いますので、視野と操作に限界があり、腹腔内の癒着、胆嚢炎、止血できない出血、胆管損傷をきたした場合などには、従来の開腹手術に変更する場合もあります。また、術後合併症により再開腹が必要となる場合もまれにあります。手術終了時に、右腋の傷から太さ5mmのフィルム状の管(腹腔ドレーン)を腹腔内の胆嚢を切除した部位にいれてきます。これは術後に胆汁の漏れが無いかをみたり、おなかの中の細菌や膿を出す目的のチューブです。手術時間は1時間前後で、麻酔時間をいれると帰室までは2時間前後となります。胆嚢炎や癒着のある場合には手術時間は長くなります。

  • 術中写真

    術中写真

  • 手術模式図

    手術模式図

術後の傷の違い

  • 通常開腹術後

    通常開腹術後

  • 腹腔鏡下術後

    腹腔鏡下術後

術後経過について

手術直後から酸素投与が始まります。手術当日、麻酔から完全にさめてから胃ゾンデは抜きます。手術翌日には、酸素投与が中止になり、尿道留置カテーテルは抜け、歩行もできるようになります。手術翌日の朝より水分やお茶が飲めるようになり、昼には食事が開始になり、夕には持続点滴は終了となります。感染予防のため、抗生物質の点滴を最低数日間は、朝夕それぞれ30分程かけて行います。異常がなければ、術後1日目頃に腹腔ドレーンを抜き、術後7日目に抜糸をして退院となります。早期退院を御希望の方は、術後数日目に早期退院が可能です。御相談下さい。上記の術後経過はあくまでも標準的な術後経過ですので、高齢者、糖尿病や心臓病などの基礎疾患のある場合、術後合併症を併発した場合には、入院期間が長くなることがあります。

麻酔の合併症について

気管内にチューブを入れる際に、歯が抜けたり欠けたりする場合があります。非常にまれですが、麻酔の合併症に悪性過高熱と言う病気があり、全身麻酔中に高熱が出て、血圧が下がり、命にかかわる病気です。悪性過高熱は遺伝しますので、血縁者に麻酔で問題があった方は必ず申し出てください。

手術の合併症について

腹腔鏡下胆嚢摘出術の主な術後合併症は、創感染、胆汁漏れ、肝機能障害、胆管損傷、消化管穿孔、肺炎、腹腔内出血などです。合併症は、通常、術後数日以内におこりますが、術後長期経過後の合併症として、癒着による腸閉塞があります。これらの合併症以外にも、様々な合併症が発生する危険があります。これらの合併症の発生頻度は、非常にまれですが、合併症発生時には担当医より説明のうえ、ただちに適切な治療を開始いたします。

麻酔および手術における危険性、輸血の必要性について

全ての麻酔および手術において100%安全というものはありません。従って、担当医として可能な限り細心の注意を払って、安全に実施出来るよう努力いたします。通常の胆石症の手術では輸血はしませんが、術前より貧血が強い場合や、炎症や癒着により術中多量の出血があった場合には輸血が必要となることがあります。(極めて稀です。)

胆石を放置した場合の経過予測

胆石症を放置した場合には、胆嚢炎や胆嚢癌を発症することがあります。胆嚢炎を発症した場合は、通常、腹腔鏡下胆嚢摘出術は困難で、開腹手術となり、手術の危険度も増します。胆嚢結石による胆嚢癌の危険性については、どの程度の関連があるのか完全に解明されたわけではありませんが、胆石症の無い方に比べて胆石症患者さんは、胆嚢癌発生率が高いと報告されています。