その他の手術

陥入爪

陥入爪とは主に足の爪の角や側面が皮膚に食い込んで痛みや腫れを生じる病気です。痛みで歩くのもつらくなりますが、細菌感染を起こすと更に腫れ痛みが強くなります。爪の湾曲が強い場合は巻き爪と呼ばれることもありますが、基本的には同じ病気と考えてよいでしょう。先のとがった靴を履き続けることなどが原因とされていますが、靴などを履かなくても強い湾曲を伴った陥入爪の患者さんは多数いらっしゃいますので真の原因は分かっていません。

  • 巻き爪の例

    巻き爪の例

  • 深爪による陥入爪の例

    深爪による陥入爪の例

もっとも大きな原因のひとつとして深爪があります。深爪とは爪を短く切りすぎることですが、特に爪の角を斜めに切り込むことが問題です。爪の角を斜めに切り込んでその上むしったりすると、爪の角にトゲができることが多くなります。それが皮膚に刺さり、更に細菌感染が加わると大変な痛みになります。この写真は陥入爪手術中、部分抜爪直後のものです。爪の左の角が痛むので、患者さん自身がそこを斜めに切り落としたのですが、かえって痛みが強くなってしまったそうです。斜めに切り落としたつもりの爪の角に実は爪のトゲ、爪棘 (そうきょく)を生じていました。しかも食い込んだ爪が皮膚を傷つけ細菌感染を生じていました。爪の角を落とすと、爪自体の湾曲も強くなるようです。ですから爪の切り方は角を直角に残して、少し長めくらいがちょうどよいのです。そうすれば、爪が爪床に食い込むことを未然に防ぐことができます。

自分で出来る巻き爪の治療

巻き爪の部分を十分に清潔に保った上で、食い込んでいる爪と爪床の間に、ガーゼを小さく米粒くらいにして、挟み込みます。そして爪が伸びてくるのを待ち、ガーゼが自然に取れるのを待ちます。その頃には、痛みもなくなっています。そして、伸びた爪をカットするときには、爪を斜めに切らず、必ず角があるように切ります。すると新たな巻き爪の予防になります。ただ感染を生じた場合には病院へ行くしかありません。

巻き爪の外科的治療

当院では主に1.の方法を行っています。

 

1. 部分的に爪を除去し、爪床、爪母をフェノールで焼灼(当院で主に行っている方法です。)
目的:部分的に爪を除去したところに爪が生えてこないようにします。陥入爪の根本的原因を防止します。爪は生えなくても日常生活に支障は無く、又下の写真でもわかるように美容的にもほとんど問題ありません。 爪は仮に全部を除去して、生えないような処置をしても体重を支えるとか、物理的な問題は生じません。

 

爪母を焼く方法はフェノール等の薬品、電気メス、レーザーがありますが、当院ではフェノールを使っています。この方法のよいところは手術が簡単で、局所麻酔の時間を含めても15分くらいで完了できることです。治療成績が安定していて効果も十分です。術後の痛みも少なく、翌日から靴を履いて普通の生活に戻れます。

手術例の経過

フェノールによる焼灼

外来で行えてしかも痛みが少なく効果が確かな方法です。

かなりひどい陥入る爪でもフェノールの焼灼療法で爪の変形も軽度で済むことが多く、当院では主にこの方法で治療を行っています。

症例1

  • 手術前(爪が爪床に食込んでいる)

    手術前(爪が爪床に食込んでいる)

  • 切除範囲をマーク

    切除範囲をマーク

  • 麻酔(これで指全体に麻酔がかかります)

    麻酔(これで指全体に麻酔がかかります)

  • 爪の切除

    爪の切除

  • 爪床が見えています

    爪床が見えています

  • 切除した爪

    切除した爪

  • 爪床、爪母をフェノールで焼灼

    爪床、爪母をフェノールで焼灼

  • 術後4日目

    術後4日目

  • 術後8日目

    術後8日目

  • 術後3ヶ月

    術後3ヶ月

症例2

  • 陥入爪

    陥入爪

  • マーキング

    マーキング

  • 抜爪

    抜爪

  • 抜爪後

    抜爪後

  • フェノール焼灼後

    フェノール焼灼後

  • フェノール焼灼後

    フェノール焼灼後

  • 術後24日

    術後24日

  • 術後2月

    術後2月

  • 術後7月

    術後7月

  • 術後7月

    術後7月

その他の処置

2.部分抜爪処置

爪の角が食い込んで痛くてしょうがない時、爪を縦に数mmの幅で抜爪することがあります。しかしこのまま放置すると一時的には痛みがなくなりますが、いずれ抜爪した部分にも爪が再生し、再び食い込んでしまい、又元のように痛みがぶり返すことが多いです。

 

3.皮弁を使う方法

根治的ではありますが、術後の痛みや治癒時間がかなり長くなります。

食い込んでいる爪の外側の部分を、縦に数 mm の幅で抜爪します。それから抜爪した後の爪床 (普段は爪に密着している爪の下の皮膚のこと) を平らに伸ばして食い込みを矯正します。この操作で生じる爪床の下の隙間には、爪の外側の皮膚を差し込んで固定します。この方法の長所は、術後爪の幅が狭くなることがなく、むしろ湾曲がとれる分だけ幅が広くなります。一方欠点は術後の痛みです。この痛みはかなり強いので、術後数日間は生活に制限をもたらします。また爪を部分抜爪するので、爪が生えそろうのに1年近くかかることが多く、その間の爪の外傷に注意が必要です。下図に手術方法のシェーマを示します。かなり、複雑な術式で時間もかかります。

  • その他の処置1
  • その他の処置2
  • 湾曲した爪を一旦、外します

    湾曲した爪を一旦、外します

  • 爪床が露出されている状態です

    爪床が露出されている状態です

  • 爪床を指の骨の上の組織からメス等で、剥離します

    爪床を指の骨の上の組織からメス等で、剥離します

  • 剥離した爪床を平らに形成し直して先ほどの指の組織に再度縫着します。そのときに外側の指の組織を内側に折りたたんで縫いつけて爪床を平らにします。

    剥離した爪床を平らに形成し直して先ほどの指の組織に再度縫着します。そのときに外側の指の組織を内側に折りたたんで縫いつけて爪床を平らにします。

術者のコメント

陥入爪の治療には、さまざまな方法がありネットで調べても迷うくらいに多くが掲載されています。
私もこれまで、さまざまの方法を実施してきました。しかしどれもこれは完璧と言う方法はありま
せんでした。治癒までに時間がかかりすぎたり、術後の痛みが強かったりして患者さんにはなかなか
満足していただけませんでした。しかしフェノールによる焼約は、術後の痛みがほとんど無く、また
通常の生活への復帰が早く、患者さんに満足していただける割合が高いようです。また、術式が
単純であるため手術時間も短く、術後のトラブルもほとんどありません。現在までに私が行って
きた治療法の中では最良の方法と考えております。

 

外科 領家 俊雄 : 個人の感想、意見です。